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こうやって読もう!中小企業の財務指標!③ 安全性分析の基本~その①

こうやって読もう!中小企業の財務指標!③ 安全性分析の基本~その①

今回は、企業の安全性分析についてお話をします。
財務三表でいうと、主にB/Sの話になります。

今回は、B/Sのなかでも、特に短期的な支払能力に関することに焦点をあてます。
前回取り上げた収益性指標(比較的馴染みやすいP/L)と比較すると難易度は上昇しますが、
平易な説明を心がけますのでぜひご一読ください。

はじめに

中小企業の財務指標シリーズも、気づけば第3回です。

初回の内容
そもそもどういった準備をしてから分析・検討に臨む必要があるのか?



第2回の内容
企業の収益性を図る際にどういった数値を検討すべきなのか?



前回は、財務三表でいうと、主に損益計算書(P/L)の話が中心でした。
今日は、企業の安全性分析(主にB/Sの話)についてお話をします。

なぜ収益性分析だけでは不十分なのか?

そもそも収益性分析とは別に、なぜ安全性分析が必要なのでしょうか?

「え、儲かっているかどうかの収益性分析ではなぜ不十分なんですか?」
という突っ込みをした人は、なかなか鋭いですね。

収益が出ていれば、その会社はある程度は安全であるといえます。
他方で、これはあくまでも「ある程度は」であって、必ずしも安全とはいえない場面も存在します。
ここでいう「安全」とは、倒産する可能性に対しての安全です。

黒字倒産、という言葉をお聞きになられたことはありますよね?
その名のとおり、黒字でも倒産してしまうことです。
つまり、黒字計上できる収益性があっても、企業が倒産する場面はあり得るということです。
そして、黒字でも倒産する場面の筆頭は、黒字であっても現預金が枯渇するケースです。

「利益(黒字)を信じられないなら、一体何を信じたらいいの?」
その答えがB/Sであり、C/Fであり、安全性分析です。

参考(以前の内容)

現預金残高に気を配ろう④ 将来のキャッシュ・フロー

安全性分析とは?

では、安全性分析とは具体的にどういったものなのでしょうか?

・当座比率
・流動比率
・固定比率
・固定長期適合率
・自己資本比率
・インタレスト・カバレッジ・レシオ

この辺りが重視されることが多いです。
個々の定義は、後述します。

これらも、以下のように分類することができます。
短期的な支払能力/安全性を確認する
・流動比率
・当座比率

資本構成、資産構成から企業の安全性を確認する
・固定比率
・固定長期適合率
・自己資本比率

負債として調達した資金のコストの余裕を確認する
・インタレスト・カバレッジ・レシオ

今回は、具体例を用いて、短期的安全性を確認していきます。

流動資産、流動負債、当座資産ってなに?

流動資産・流動負債という言葉に耳馴染みはあると思いますが、
当座資産という言葉は、普通に生きているとあまり耳にしない言葉です。

当座資産とは、流動資産のうち、

・現預金
・売掛金
・受取手形
・有価証券(売買目的)

のことで、ハッキリいってしまえば、

・近い将来に現預金に換金可能なもの
・自分の意思で現預金に換金可能なもの
・現時点で現預金として所有しているもの

を指します。

売掛金は、一般的には、少なくとも3ヶ月あれば現金化されますよね?
受取手形も、一般的には、少なくとも6ヶ月程度で現金化されることが多いです。
有価証券(上場株式)は、売却しようと思えば、即現金化可能です。

上掲のとおり、流動資産の一部が当座資産です。
流動資産には、当座資産には含まれない下記内容が含まれます。
・棚卸資産(在庫)
・前渡金、前払費用などの経過勘定/未決済項目
・その他種々

流動資産と当座資産の大きな違いは、棚卸資産が含まれているかどうかです。
流動資産には棚卸資産が含まれていますが、当座資産には含まれていません。
後述するように、当座比率・流動比率ともに高いほうが望ましいので、
流動比率のほうが、指標としては緩いですね。

短期的安全性をみてみよう

言葉の定義を確認したので、いよいよ本題に入ります。
安全性分析とは、企業の資産、負債及び純資産を検討し、その企業の倒産リスクを検討することです。
まずは短期的な安全性指標から。

短期的な安全性とは、企業が直近1年間程度で資金の支払いに窮するかどうかを判定する基準です。
・流動比率
・当座比率
この2つが、短期的な支払能力を判断する際に、一般的に用いられる安全性指標です。

流動比率
流動資産÷流動負債×100

当座比率
当座資産÷流動負債×100

流動比率も当座比率も、分子は流動負債です。
分母はそれぞれ流動資産と当座資産です。

短期的な安全性分析をする際の、ポイントはただ一つ。
分母が大きいほうが評価が高い、ということです。
言い方を変えると、下記の式に合致するかどうかですね。

当座資産>流動負債
流動資産>流動負債
これに合致すれば、1年以内に支払いに困窮することはないと判断されます。


逆に…
当座資産<流動負債
流動資産<流動負債
であれば、1年以内に支払いに困窮すると判断されます。


先ほどご説明したとおりで、当座比率とは、一年以内に支払期限が到来する現金支出を、
近い将来現金化が約束されている資産で賄えるかどうかを判断するためのものですね。

他方で、流動比率も、一年以内に支払期限が到来する現金支出を、
流動資産で賄えるかどうかを判断するためのものです。

当然ですが、金融機関目線では、当座比率と流動比率は、高いほうが好ましいです。
なぜなら、貸したカネが返ってくる可能性が高いと考えられるからです。

具体例で確認!

上記にA社とB社のB/S(抜粋版)を用意しました。

まず確認しましょう。
A社とB社は短期借入金と一年以内返済長期借入金の2項目が違うだけです。
B社のほうがA社より、一年以内に返済期限の到来する借入金の金額が多いです。

A社B社の将来性が同一だったら(将来C/Fが同じという意味です)、
あなたが金融機関なら、どちらの会社におカネを貸したいでしょうか?
A社B社のPERが同じだったら、
あなたが投資家なら、どちらの会社の株を買いたいでしょうか?

わたしはA社におカネを貸したいですし、B社の株を買いたいです。
理由は簡単。
A社のほうが無事に返済される可能性が高く、倒産し株が無価値となる可能性が低いからです。

まとめ

今回は、企業の短期的な支払能力について、安全性分析を基礎にお話をしました。
次回は、資本構成、資産構成などから、企業の安全性を分析します。
引き続き難易度は高いですが、ぜひご覧ください。

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