News&Blog お知らせ

クロスSWOT分析② SWOTを掛け合わせ最適解を導く

クロスSWOT分析② SWOTを掛け合わせ最適解を導く

はじめに

前回、クロスSWOT分析をする際には、SWOTを丁寧に洗い出すことが大切だとご説明しました。

前回の記事
クロスSWOT分析① SWOTの洗い出しとクロスSWOTに向けた準備



今回は、いよいよクロスSWOT分析本論に入ります。
まずは比較的理解しやすい【強み】から始めます。
次回以降、【弱み】をみていきます。

前回のおさらい

・Strength(自社が内部で抱えている強み)
・Weakness(自社が内部で抱えている弱み)
・Opportunity(自社にとってプラスの外部環境)
・Threat(自社にとってマイナスの外部環境)
SWOTをこのように理解しましょうというお話でした。

内部と外部をまず切り分けます。
その後、切り分けた内部と外部を、いいもの悪いものにわけるというイメージです。

内部環境をチェックする際は、バリューチェーンに着目するとわかりやすいです。
外部環境をチェックする際は、PEST分析などがよく用いられます。
バリューチェーン分析、PEST分析については後日ご説明します。

今回の仮想企業

今回、仮想の企業に登場していただきます。

株式会社南関東モータース
業種:自動車整備業
設立:2000年4月
従業員数:25人
売上:600,000千円
直前期税引後利益:35,000千円
現預金残高:400,000千円
有利子負債:200,000千円
純資産:300,000千円

南関東で自動車整備業を営む南関東モータース株式会社です。
空港の近くに位置しており、大手運送業者のトラック整備等を請け負っています。
同時に中古車の販売も手掛けています。
売上/利益の比率は、下記のとおりです。

自動車整備:
売上400,000千円(特定の取引先への売上が75%)
利益20,000千円(特定の得意先からの利益は80%)

中古車販売:
売上200,000千円
利益15,000千円

南関東モータースは、創立20年間黒字経営を続けてきました。
地域のお客様からも、「車検、板金、整備といえば南関東さん」と認識されています。
手許のキャッシュも400,000千円あり、いまなら新規資金調達も容易に実施できます。

足元の状況はいいのですが、数十年間競争に勝ち抜くために、
南関東モータースは自社のアクションプランを練ることになりました。

【強み×機会】【強み×脅威】をみてみよう

【強み×機会】で検討すべきことは、チャンスを逃さないためにどうするか?です。
上掲表に、南関東モータースのSWOTを羅列しました。

南関東モータースの強みは、下記のとおりです。
・仕入先/販売先とのコネクション
・営業力
・認知度(ブランド)
・整備技術と整備スピード

外部環境の変化は、下記のとおりです。
・配送物の小口化(輸送頻度の増加)
・大規模物流の頭打ち
・自動車のコンピューター化
・国内自動車保有数の頭打ち(中長期的には減少)
・中古自動車の途上国への輸出量増加

これらの状況を踏まえ、何をするのか?です。

具体的に内容を検討する

上の表に水色で対応すべき内容を列挙しています。

・まずは地域の整備ニーズを取りこぼさない
・自社で販売した整備を絶対に獲得する
・大手運送業者から取引減少を提示された際に備える
・販売ではなく整備で収益を確保する
・輸出中古車を収益化する(整備が現実的か)

といった行動を採るべきでは?という結論です。

自動車整備業も中古車販売業も、向こう数十年はまず間違いなく市場が存在します。
他方で、市場は確実に縮小していくと考えられます。

【強み×機会】では、下記を最も意識しました。
「地域のニーズを取りこぼすことなく輸出市場とEC市場に対応すること」

機会は、大きく分けて2つに分類できます。
「小口輸送の増加」と「中古車輸出の増加」です。

まずは、地域での認知度を活かして、地域の整備ニーズを確実に受注します。
その次に、大手運送業者へスピード感ある業務と稼働余力をアピールします。
多少利益率が毀損しても受注すべきタイミングかもしたいところですが、
大手運送業者の利益率は一般顧客の利益率と比較して低いです。
一度大手運送業者への業務提供フローを見直す必要がありそうです。

上記のような既存事業の補強に加えて、下記施策も検討します。
・小口輸送が増加しているので、小規模事業者に対して営業をします。
・中古車輸出業者に対して、整備を請け負えるかどうかを確認します。
・自社で廃車する自動車を輸出できるかどうかを検討してみるのもアリです。

このように、自社の強みと機会を掛け合わせてみることで、
「いまできることはなんなのか?」を考えることができます。


【強み×脅威】では、下記を最も意識しました。
「既存の得意先からの受注が減少した際に生き残ることができる体制づくり」

脅威も大きく分けて2つに分類できます。
脅威は、「大型物流の頭打ち」と「自動車数の減少」です。

避けなければならないのは、「得意先から受注減でCashが回らなくなること」です。
得意先の外部環境である「大規模物流」が頭打ちになっているので、
同社からの受注は今後減少する可能性をはらんでいます。
なので、同社依存を避けるためにも、他の運送業者に営業する必要があります。

現時点で自動車保有数は頭打ちです。
今後、人口減少を控え、所有から共有へという流れのなかで、
販売ではなく整備で収益を計上することは必要不可欠です。

南関東モータースは、ピカピカの決算書を作り上げています。
手許キャッシュも潤沢で、純資産も積み上げてきました。
新規事業をする際、よほどのことがない限り融資は出ます。
何か新しいことを始めるタイミングかもしれません。

まとめ

長くなってきたので、今回はここまでにします。
大切なのは、丁寧にSWOTを洗い出すことです。

本事例でいうと…
「大規模物流の頭打ち」と「小口輸送の増加」を混ぜて理解してしまい、
「まだ物流は伸びるからドカンと設備投資だ!」となってしまうと最悪です。

次回は、【弱み×機会】【弱み×脅威】についてみていきます。

次の記事
クロスSWOT分析③ 弱みを克服することで、機会を逃さず危機を回避する

お知らせ一覧に戻る