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現預金残高に気を配ろう② なぜCash is Kingなのか?

現預金残高に気を配ろう② なぜCash is Kingなのか?

よく「キャッシュが大切だ」といいますよね?
“Cash is King”という言葉が示すとおり、
企業経営をする上で、現預金は「王様」です。

では、ここで質問です。

一体なぜ…

“Profit is King”
“Equity is King”
“Income gain is King”
“Future cash flow is King”

ではなく“Cash is King”なのでしょうか?
なぜ利益も純資産もKingにはなれないのでしょうか?
さらに言えば、“Future cash flow”ではなく、なぜ現預金なのでしょうか?

こういった観点から、現預金の重要性について説明します。

いざというとき何が頼りになりますか?

最初に確認しておきたいことがあります。
企業も個人も、赤字になるだけでは破産しません。
赤字になっても事業は継続できるからです。
(もちろん赤字を推奨しているわけではありません…)
(通常赤字企業は現預金が流出し、新たな融資も困難になります…)

他方で、現金が枯渇すると、どんなに黒字であっても、事業の継続は困難になります。

さっそくですが、以下の状況を想定しましょう。
●明日仕入先に10億円の支払いがある
●明日の支払を滞ると仕入がストップしてしまう
●今日時点で8億円の現金が手元にある
●明日の入金予定は0円
●現金商売なので売掛金がなくファクタリングはできない
●金融機関からの借入は望めない
●在庫の金額が5億円ある
●在庫を担保にした借入も断られた

この状況、きっとこう想像するはずです。
「イケイケだったとはいえ、なんで5億円も在庫抱えてしまったのだろう…」と。

在庫なら即時の換金可能性が多少はあるのでまだマシです。
仮に資産に残っているのが在庫ではなく、
工場建設費5億orソフト製作費5億だとしましょう。
きっとこう想像するはずです。
「イケイケだったとはいえ、なんで建設費or開発に5億も使ってしまったのだろう…」と。
即時の換金可能性は低く、融通が効きません。

融通が効く。
これこそがまさにCashがKingたる所以です。
在庫では支払いも返済もできませんし、もちろん給与も払えません。

幅広い状況に対応できる切り札。
それが現預金です。
これこそが、仮に税引後利益を1兆円叩き出す企業であっても、
現預金の管理を怠ってはいけない理由です。

なぜ利益はKingになれないの?

まずは、なぜ利益はKingになれないのかを考えてみましょう。
4月に8億円を仕入れ、5月に10億円の売上を立てた場合を想定しましょう。
●10億円に対応する仕入8億円の支払いが1ヶ月後(5月30日)
●10億円の入金が3ヶ月後(8月31日)

このケースで、2億円の粗利を確保しています。
粗利という視点でみると、儲かっています。

他方で、視点をCashに変えてみましょう。
5月30日に8億円の手当てが必要になりますが、売上の入金は8月31日です。
現預金が足りませんね…。

このときに、何か大きな支払いが重なってしまうと最悪です。
現実にはここまでわかりやすい例はほぼありませんが、
入金/支払サイトのズレでCashが貯まらないケースは多々見受けられます。

少し冷静に考えてみましょう。
なぜ利益を得たいのでしょうか?

「なぜ利益を得たいの?」という問いに対する回答は、
もちろん「Cashを増やしたいから」となります。
これは忘れがちですが、本当に大切なことです。

利益(P/L)ばかりに目がいってしまうと、利益の絶対額を追い求めてしまいがちです。
その結果、現預金を増やすという本質を忘れてしまうのです。
企業活動の最終目標が利益の獲得ではなくCashの獲得である以上、
利益は現預金を超えてKingになることができません。

企業価値は「利益」ではなく将来キャッシュ・フローの現在価値で評価されます。
(もちろん純資産が「企業価値」だという考えを否定するつもりはありません)

その観点からも、利益は現預金の代わりにはならないですね。

なぜ純資産はKingになれないの?

次に、なぜ純資産はKingになれないのかを考えてみましょう。

●毎期積み上げた繰越利益剰余金が10億円
●純資産の合計額は15億円
●繰越利益剰余金を再投資しているのでCashは2億

この状況、いかがでしょうか?

「純資産が積みあがっている=現預金で保有している」

という幻想が世に蔓延っていますが、現実はそうではありません。
企業が純資産以上に現預金を保有しているケースは、ほぼありません。

純資産の大半を換金が遅い資産に投資してしまうと、
純資産比率の高い企業であっても現預金不足に陥る可能性はあります。

利益同様に、純資産も現預金のかわりにはなりません。

なぜ将来キャッシュ・フローではなくキャッシュなの?

現金と将来キャッシュ・フローは、明確に異なります。
ここでは将来キャッシュ・フローを以下のように定義します。

「将来獲得が見込まれる現金の総額」

将来キャッシュ・フローは将来獲得が見込まれる現金なので、
現時点での現金ではありません。
つまり、以下のような問題点を抱えています。
●将来獲得が見込まれる現金であって、100%の獲得が保証されているわけではない
●将来獲得が見込まれる現金であって、現時点で何かの支払に使用できるわけではない
●将来獲得が見込まれる現金なので、多かれ少なかれ見積もりが含まれている

一言でいうと、将来キャッシュ・フローは、現預金と比較すると曖昧ということです。
獲得可能性が約束されていないので、キャッシュに劣ります。
将来キャッシュ・フローは現時点で手元にあるわけではありません。

したがって、将来キャッシュ・フローも現預金のかわりにはなりません。

まとめ

ここまでみてきましたが、やはりCashはKingです。
現金の代わりは何にも務まりません。
いざというときに、会社を守ってくれるものは現金です。

みなさんの会社は現預金残高を気にされていますか?

気にしていない場合は…まずは、

●前期の現預金増減はなにが原因だったのか?
●3ヶ月後の現預金残高がいくら?

を把握することから初めてみてはいかがでしょうか。

次回以降で、
●過去の現金推移を把握する方法(キャッシュ・フロー計算書)
●将来の現金を予想する方法(資金繰り表)
を紹介します。

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